JIGEN3の斜に構えた日々-。 


あなたの部屋 私の部屋

インフルで自宅療養中に。

人はやらされ仕事が嫌いで
任され仕事にやりがいを感じる。
ああしろ、こうしろ、と指示されるのは新人の頃だけ
とは思いこみで、任せても問題ないと思っている。
(きっかけとフォローは要る)

新たな道は人が作り、
ベストな方法は物理の原理原則のもとに。
が持論。




あなたに奇跡と幸運があふれだす「ゆるふわ」の魔法 より

葵井 美香子 PHP研究所


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「井上さん、今日、残業お願いできる?
どうしても仕上げてほしい資料があって」

そろそろ帰り支度を始めようと思っていた
矢先に、そう課長が言ってきた。

「え?今日ですか?
しかも、いま言うんですか?」

と思わず言いそうになるのを飲み込んで

「課長、すみません。
今日はちょっと用事があって…」と
やんわり伝える。

今日は、仲よしの友だち3人で夜ご飯を
食べようということになっていたのだ。

でも、あわてたような顔をして

「困ったな。
今日はほかに頼める人がいないんだ…」

と、つぶやく課長を見ると
申しわけないような
かわいそうな気持ちにもなってきた。

「約束があるならしかたないな。
できる範囲でもかまわないんだけど
時間まで手伝ってくれないか?」

と言うので
私は「わかりました」と待ち合わせの時間
ぎりぎりまで残業を引き受けることにした

課長から渡された資料をもとに
パソコンに向かう。

これはとてもじやないが、
課長一人で今日中に仕上げることはできない量だった。

内容を見ると
もっと早くから取り組むことができたこと

なぜ、こんなぎりぎりになって!?

課長はいつもそうだ。

急に何か頼みごとをしてくる。

もっと前から準備できることじゃない?

早くに言ってよ
というようなことがわりと多い。

しかも気のせいか
いつも私に言ってくるように思える。

同僚が課長からそんな頼まれごとを
されているのは、ほとんど見たことがない

もう、なんで私ばかりに
面倒くさいことを言うの、そう思いながらも
なかなか断れずに引き受けることが多かった

カタカタとキーボードを打つ音だけが
響き渡る静かな部屋で、黙々と仕事をする

ふと、時計を見ると7時をまわっていた。

あ、そろそろ行かなくちゃ……
ちらりと課長に目をやると
パソコンに向かって真剣な顔をしている。

ああ、この課長を一人残していくのは
気が引ける。

しかたない、もうすこし区切りのいいところまで
仕上げてから行くとするか。

そう思い、私は友達に
「ごめん、急な残業ですこし遅れるから。
先に2人で始めていて」とメールをした。

気がついたら、8時になっていた。

さっきからお腹が何度も鳴っていたので
私はいただきもののおせんべいを
ポリポリつまんでいる。

そのせいか
お腹もそれなりに満たされてきた。

ああ、やだ、せっかく今日はおいしいものを
みんなで食べようと思っていたのに……。

もうそろそろ
ほんとうに行かなくちゃと思いつつ
いま終えると微妙に中途半端な
仕上がりなので、あとすこしだけ…とまた
パソコンに向かう。

ふと課長を見て
私はまさに、目が点になった。

なんと、寝ていたのだ……。

椅子に座ったまま
ゆらゆらと船をこいでいるではないか。

ちょっと、ちょっと、私がこんなにアクセクやっているのに、いったいなんてこと!?
と思い「課長!」と声をかける。

「は、ああ、ごめん、寝てた、寝てた……」と言いながら、
課長は目をこすって大きなあくびをした。

私は、え~っ?!なんで寝てるの?
課長の態度にムカムカしたけれど
それ以上、何も言えなかった。

そのまま何もなかったように
ふたたびパソコンに目をやり
区切りのいいところまで仕上げると
「すみません、お先に失礼します」
そう言って会社をあとにした。

もう、ほんと、嫌になっちゃう。

友だちと会う時間を遅らせてまで
手伝っているというのに
頼んだ張本人が居眠りするなんて
いったいどういうこと?

ムカムカした気持ちはなかなか消えなかった

私は早足で友達がいるお店へと向かう

息を切らしながらお店に着くと
もう9時を過ぎてしまっていた。



「おはよう!」
会社のすこし手前で
ばったり課長と出くわした。

さわやかな月曜日の朝だ。
「あ、課長。おはようございます」
私は答える。

一緒に会社までの道を歩きながら
このあいだは
課長は何時まで残業していたのだろうか?

ちゃんと仕上げることはできたのだろうか?
そんなことが気になる。

けれども、課長はのんきに
「いい天気だなあ。
もうすぐゴールデンウイークだね。
井上さんはどこかへ行くの?
おれはゴルフに行くかゆっくり家で過ごすかなあ」
などと楽しげに話している。

そんな課長の話を聞きながら、この人は
「先日はありがとう」とか
「遅くまですまなかったね」とか
何かひと言、言えないのだろうか
とイライラしてきた。

先週の金曜日、友だちとの約束を
遅らせてまで手伝った残業のことを
もう忘れてしまったのだろうか?

思い起こせば、課長には
いつも振りまわされている感じがする。

なんで、課長はいつもこうなんだろう?

そんな思いで頭がいっぱいになった。



「へえ、それで、課長は結局
お礼も言わなかったってわけね」

友香はシナモンスティックで
紅茶をかき混ぜながら言った。

「うん、そう。
せっかく課長のために残業したのに
なんだかばからしい気持ちになったわ」

「それはね
課長の部屋に入り込んじゃったのよ」
そう友香は言った。

「課長の部屋?」
私は意味がまったくわからなくて聞き返した


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「そう
私たちはみんな自分の領域があるんだけど
それを部屋だと思ってね。

部屋の中には何があるかというと
その人の『お仕事』があるの。

お仕事というのは、その人がやるべきこと
その人の役割、そんなふうにイメージしてね

それで、誰かの部屋に入っていって
『その人のお仕事』を
自分が請け負ってやってしまったり、逆に
自分の部屋に誰かが入ってきたり、または
自分の部屋のことなのに、誰かが来て
『私のお仕事』をやってくれるべき、なんて思うときに、
私たちは人間関係で悩んだり
苦しんだりしているの。

逆に、自分の部屋のことは自分でする
そして誰かの部屋のことはその人がする
ということを意識していると
いい人間関係でいられるのよ。

具体的な例をあげてみるね。

たとえば
友だちとランチに行く約束をしました。

そのお店は、自分の家と友だちの家の
中間くらいの場所にあるので
現地で待ち合わせをしようと提案しました

そうしたら、友だちは
『私、方向音痴だから迎えにきて』
と言いました。

さて、この方向音痴の友だちが
ちゃんと約束の場所にたどり着くのは
誰のお仕事でしょうか?」

「それは、その友だちのお仕事よね?」
私は答える。

「そうね。
もし、ほんとうは自分も忙しかったり
ちょっと面倒な気持ちもあったりするけれど
方向音痴でかわいそうだし、そんなふうに
言うならしかたないなと思って
迎えにいってあげたとします。

これは、その友だちの部屋に入り込んで
その人のお仕事をやっている状態だって
わかる?」

「え~と、そうね。そういうことになるよね

でも、困っているとき、その人を助けたら
ダメなのかしら?

お願いごとをされても
やってはいけないっていうこと?」

「ううん、そうではないの。

誰かに何かを頼まれたときに
それを自分ができるかどうか?

ではなくて、やりたいかどうか?
というふうに考えてみることが大事なの。

たとえ、親切なやさしい気持ちでやったことだとしても、やりたいかどうかではなく
できるかどうかで考えて
誰かの部屋に入って
その人のお仕事をしてしまうと
じつは、必ずどこかで
ストレスや負担が生じたりするものなの。

何回か続くと
いつも私ばかりって思って疲れてしまったり
こんなにしてあげたのに感謝がないわ
とイライラしたり。

でも、自分が心からそうしたいと
思ってやることは疲れないし
見返りも期待しないものなの」
そう友香は言った。

まさに、課長との出来事が
これにぴったり当てはまる、と思った。

私は「やりたいかどうか」ではなく
「できるかどうか」で考えていた。

だから、課長の部屋に入っていって
課長のやるべきことを
かわりに引き受けてしまったのだ。

たしかに、やりたいかどうかと言われると
やりたくなかった。

だって
友だちとの約束のほうに行きたかったから

でも、課長が困っているのを見て気の毒に
思ったので、すこし無理をして手伝った

だから、私のなかに「やってあげた」というような気持ちがたしかにあった。

それゆえに、お礼のひと言もない
課長に対してイライラしていたんだな。

「ああ。
私は、課長の部屋に入り込んでいたわ……」
私はつぶやく。

「真美子のなかに、頼まれたら
それは必ず引き受けなくてはいけないとか
断ることはいけないことだ
というような思いはないかしら?」

ああ、たしかに
そんなところがあるかもしれない。

困っている人がいたら
助けるべきだと思っているし
頼まれごとはなるべく
引き受けたほうがいいとも思っている。

「それって
真美子が自分の部屋にいない状態よね。

つまり、誰かの部屋の中で、自分は
何ができるかなって考えているってこと。

じつはこれって
『あの人はいつも引き受けてくれる』
というふうに
相手にも思わせてしまうから
依存されやすい状況をつくったりもするのよ」
友香は言う。

「そうか……だから、いつも課長は
私にばかり頼んでくるのね」
私は溜め息まじりに言った。

「それとね、人は本来、誰もが
自分の問題や出来事を解決したり
取り組んでいったりする力をもっている
と言われているの。

でも、誰かの部屋に入っていってかわりに
受けもったり、やってあげたりしてしまうと
その人がほんとうの能力を発揮したり
成長したりする機会を奪うことも
ときにはあるのよ」

「たしかに、課長はいつも
もっと早めに言ってくれればいいことを
ぎりぎりになって言ってくるのね。

それで、課長もあわてているの。

きっと、私や誰かがやってくれるから
なんとかなるかも……って思って
準備が遅いのかもしれないわね」

「でも……
課長を放って帰ってしまっていいのかしら?
困っていたのに……」

「まずは、真美子がどうしたいか?

それを心に聴くの。

そのうえで、どんなふうに
何ができるかを考えるといいのよ。

課長からの残業を頼まれたとき
ほんとうだったら、どうしたかったの?」

私はすこし考えて
「うん、残業はしたくなかったわ。
だって、友だちと約束していたし。
できれば断りたかったわ……
え?もしかして、私……
断ってもよかったっていうこと?」

と言うと、友香は
「うん、そうよ」と笑って言った。

目から鱗だった。

いままでの人生を振りかえってみると
私は「断る」ということが
自分の選択肢にあまりなかった。

何かを頼まれたり、お願いごとをされたりしたときには、
できるかぎりやらなくては……
と、なぜかいつもそう思っていた。

だから、いつも自分のこと以外のことで
忙しい感じがしていたし、
やりたくないことを引き受けてはストレスいっぱいになったり
なんで私ばかり…と悔しく思ったりしていた

それに、自分のことはだいぶ
あとまわしになっていた気がする。

誰かとおつきあいをしているときもそうだ。

いつのまにか
彼のお世話をしているような感じになったり
いつも彼のペースで行動したり、
気がつくと「私ってもしかして、都合のいい女?」
そう思うこともあった。

いつも損な役まわりを担当する自分の運命を嘆いていたけれど
やりたいかどうかではなく、
できるかどうか
で決めてしまっていた私が、
自らそういう状況をつくっていたのかもしれない

そう、はじめて思った。

「断ってもいいのか……」それは、私の
気持ちを楽にしてくれる新しい発見だった

「そう、自分の気持ちを大切にしたうえで
その人にしてあげられることがあると思うの

今回の場合だったら、どうかな?
何か思いつくことある?」友香は聞いてきた

「そうね……たとえば
今日は何時までならできます、とか
明日ならできますよ、と伝えるとか。

あとは、課長のことを手伝いたいという
気持ちはあるので事前にわかっていることは
できれば早めに言ってほしいと伝えるとか
かな……」そう私は言った。

「そうそう、そんなふうに、
自分のやりたいかどうかの気持ちを大切にしたうえで
実際どうするかを決めると
やらされている感じや、損な役まわりを
引き受けている感じは減ると思うの。

そうすると、相手に対して腹を立てたり
イライラしたりすることも少なくて
不必要なストレスを感じることもないし
むしろ、その人といい人間関係を築くことができると思うの」
友香はそう言った。

「ところで、逆に、誰かが自分の部屋に
入り込んでくることってあるかしら?」
私は質問を投げかけた。

「あるある。私たちはよく
人の部屋に入り込んだり
逆に入ってこられたりしているのよ。

たとえばね、あなたは絶対こうすぺきよ
なんて強く言われてしまうとき
たまにあるじゃない?

こういうのは、その人が
自分の部屋に入ってきている状態なの。

私がどうするかは私の部屋の出来事でしょ?

つまり、私にしか決めることができないことのはずなのにね。

そういう出来事で思いつくことある?」

「そうね…このあいだ、友だちに会ったら
『真美子みたいな人は絶対お見合いがいい。お見合いすべきよ』
って言われたの。

私はお見合いなんて、いまはぜんぜん
眼中にないことなんだけれど、そう言われてすこし焦っちゃったの」
と私は答える。

「あ、そうね、それも真美子の部屋に
すこし入ってきているかもね。

でもね、そういう言葉を聞いて、どう思うか
どうするかは真美子が選ぶことができるのよ

もし、そんなふうに言われて
ほんとうはお見合いをしたくないのに
しなきゃいけないのかしら?

どうしよう?
なんて、強く影響されてしまうようだったら
それは真美子の部屋を
相手に明け渡しているような状態よね?」

友香はすこしお茶目に笑いながら言った。

「たしかにそうよね
乗っ取られているかも…」私もつられて笑う

「でも、そんなふうに言われても
自分がやりたいかどうかで考えてみて
お見合いはいまは必要ないわ、って思えたら
あまり影響されていないでしよ?

だとしたら
真美子の部屋は守られているわよね。

だから、自分がやりたいかどうか、つまり
心が望んでいるかどうかをちゃんと見つめて
自分自身を知ることがとっても大事なの。

真美子の部屋のことはいつも真美子が決めて
真美子がやるのよ」そう友香は言った。

そうか
誰かが私の部屋に入り込んできたときも
自分がどうしたいか
それをやりたいかどうか
そのことがすごく大切なのか。

ちゃんと見つめていないから
自分の気持ちがわからず、結局
いつも誰かに振りまわされているように
感じていたのかもしれない。

「それからね、自分の部屋の中にある
『お仕事』を誰かがやってくれるべき…
って思っているときにも
ストレスが起きやすいのよ」

「それって、どんなとき?」

「もし、何かで落ち込んでいるとするよね

そんなときにたとえば
彼があまり気づいてくれなくて
やさしくしてくれなかったとしたら……

なんで、もっとやさしくしてくれないの?

彼氏だったら
もっとやさしくするべきじゃない?

もし、そんなふうに思ったとしたら、これは
自分の部屋の『お仕事』を彼が
やってくれるべき、と思っている状態なの

つまりここでは、自分の感情のケアは
彼氏がするべき…と思っているのね」

「ああ、なるほど。そっか、そうだね。
そういうこと、私もあるかもしれないなぁ

ということは、いつも、基本にあるのは
自分の部屋のことは自分がする
誰かの部屋のことはその人がする
っていうことなんだよね」

「そうそう、それだけで
かなり人間関係のストレスが減るのよ」



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Posted by JIGEN 3 on  | 2 comments  0 trackback

2 Comments

とらきち says..."そうかなぁ・・・・"
欧米的な考え方なような?

日本には 引き戸 ってあるでしょう?
それは 新築のしっかり閉まる引き戸もあれば
古くて隙間があくような 引き戸もありますよね

確かに集団的に結果が出ればOKな風潮は
古くからあるけれど・・・
隣人が困っていたら手を貸すのも情けかなって
これ読んで思いましたね・・・

時代や風潮は変わるにしても
手を差し伸べる術を 気持ちから遮断されてるようで
どうなんだろう・・・
少し寂しい気がしましたね

人それぞれなんでしょうけど (^。^)
2015.01.15 17:19 | URL | #OLHiJ7es [edit]
JIGEN 3 says..."Re: とらきちさん"
なるほど。
そうとらえられましたか。

仕事の関係、ごく親しい身内、遊びだけの仲間
それぞれ、依存の度合いでストレスの感じ方は違うと思います。

仕事では、ガチガチに管理するのはきらいだし、されるのもイヤだ(笑
でもフォローは要りますね。

歳を取って、
いつか、「バイクに乗るのをやめなさい。」と言われても
「僕の部屋に入るな。」とは言えない日がくるんでしょうね(笑

2015.01.15 18:10 | URL | #- [edit]

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